代名詞の教え方 1
he, she, it
中学一年生を想定しています。
he=彼、she =彼女 などとは決して教えません。代名詞は機能、役割です。
基本は観察させ、体験させる。
中学生は大体部活をしている子が多いので、その情報などを使いましょう。
仮にYoshikoと言うバスケットボールをする女子生徒がいたとします。
教師はあらかじめ、生徒について(全員でなくても構いません)、兄弟がいる、趣味、などプライバシーに触らない程度の情報は集めておきます。
1. 何人かの生徒をクラスに紹介する。
Yoshikoのそばによって、
Yoshiko is a student in middle school.
Yoshiko plays basketball, and Yoshiko plays the piano.
Yoshiko likes American Pop music very much.
今度は男子生徒の一人に近寄って、仮にTaroとしておきましょう。
Taro is a student in middle school.
Taro plays tennis.
Taro goes to swimming school.
Taro swims very well.
そのさい、教師はYoshiko, Taroと固有名詞を何度も言うことを、さも面倒くさそうにやることです。
その後、もう一度、同じことをクラスの前でデモンストレーションします。
ただし、今度は代名詞を使います。
Yoshiko is a student in middle school.
She plays basketball, and she plays the piano.
She likes American Pop music very much.
Taroについても同様に行います。
そしてさらに別の女子生徒一人、男子生徒一人を使ってデモンストレーションして見せましょう。
それで生徒は大体代名詞を使うことの意味を察知します。
He とsheの区別がもう一つついていなさそうだ、そう感じたときは、教室を歩き回り、男子を指さし、he, 女子を指さし、she 何度もやり、今度はただ男子を指さすだけ、女子を指さすだけで、生徒にhe、sheと言わせましょう。
この時注意したいのは、指さされた生徒には必ずIと言わせること。
そして教師は時々自分自身を指さし、生徒にYouと言わせることです。
2. 生徒自身に紹介させる
今度は生徒を一人選んで、その子にクラスメートの誰でもいいから一人をクラス全員に紹介するようなつもりで、教師と同様のことをやらせてみます。
うまくできなくても、okayです。そのことを強調しましょう。
別の子にもやらせてみましょう。
3. 日本の学級は班に分かれていたりするので、今度は班に分け、その中でさっきクラスでやってことと同じことをやらせてみましょう。そして、生徒自身に一番うまく出来たと思える子を選ばせて、班を代表してそれぞれの班ごとにクラス全体に向けてやってみます。he, sheをきちんと使えているか、全員にちゃんと聞かせること。このことに注意を払ってください。
4. it
私は自分の車を使います。
I have a car.
My car is a Toyota.
My car is yellow.
My car is old, but my car is a good car.
この時も、my carと何度も繰り返し言うことをさも面倒くさそうに言って見せます。
そして、
もう一度やり直します。Itを使います。
I have a car.
It is a Toyota. It is yellow. It is old, but it is a good car.
(余裕があれば、it isはit’sと言い直します。)
(教えるタイミングによっては生徒はこの時のbe-verbの必要性が見えません。それはあとの課題となっても構いません。)
生徒に同様のことをしてもらいます。なんでもいいから自分が持っている物を選ばせて、クラスに紹介させます。班でやらせて、あとで発表させるなど、なるべく生徒同士の対話が増えるような工夫をします。
5. Do you play tennis?
Does your mother speak English?
Does your father drive?
Is your house big?
Do you …?
こういったYes-No questionを20以上並べたhandoutsを配る。
生徒に質問させて教師が答えて見せる。
Yes, I do. No, I don’t. は普通に答えるが、
Yes, my mother does. No, my father doesn’t. No, my house isn’t.これはちょっと面倒くさそうに言う。
そこで、生徒に別の答え方が無いか、目や、体全体で聞く?
my mother, my father, my houseの代わりに、she, he, itが出てくればokay.
生徒から引き出すこと。
6. 生徒同士でペアワーク
20ほどのyes-no questions に代名詞を使って答える。
(代名詞を使うことの便利さと意味を体感してもらうためにも、これ以前の授業で、代名詞を使わないで、質問に答えることをしばらくしていた方がいい。その伏線があった方が、生徒は代名詞の働きを実感できます。)
ここに示したのは大まかな案です。もちろんそれぞれのクラスの状況によって変える必要もありますし、万能ではありません。臨機応変な対応が必要でしょう。ただ、参考にしていただければ幸いです。
they、weについて、my, me, his, him,etc.についてははまた次回の投稿で。
2014年2月14日 14:13 - CATEGORY : blog
安心ください。My name is…普通に使います!
ちょっとどうしても伝えたくて番外編です。
先日、某メジャーなテレビ局の朝の情報発信番組で、私たちが学校で習った英語と実際にネイティブが話す英語の違い、について時間を割いていました。たまたま見たその内容にとても違和感を覚えたのは私だけでしょうか。
My name is…と言うのは「拙者は何々でござる」ぐらい古い感じがしておかしい。I am….と言うのが正しい。
What’s your name? と言うのは「あんた名前は?」みたいなニュアンスでぶっきらぼうで、だから使わない。
いいえ、決してそんなことはありません。
My name is…. What’s your name? どちらも普通に使われます。状況によります。
確かに、私がアメリカで暮らしている頃、My name is .と自分の名前を名乗るより、I am …. と言うことの方 多かったと記憶しています。ただそれはカジュアルな場に参加することの方が圧倒的に多かったからです。
私の知り合いのアメリカ人の英会話講師も、一番最初のレッスンのときなど、新しい生徒に向かってMy name is….と自己紹介をすることの方が多いと言っていました。I am …でもいいのですが、初対面の生徒に対して、まずきちっとした言い方を好む彼はそう言いました。
What’s your name? と聞かれることもあります。
アメリカの大学のクラスで発言しようと手を挙げたときに、教授がとてもフレンドリーなトーンでWhat’s your name? と聞いたりすることはたくさんありました。「あんた名前は?」というニュアンスとは程遠いものがあります。
要するに、全て状況によるということです。
番組の中で、私は見落としたのですが、家内によると、レポーターが街頭に出てネイティブにインタビューして、My name is…は古いみたいにことを言っている場面があったそうです。もちろん彼らがウソを言っているわけではありません。ただ、街頭インタビューでは、じっくり考えて物を話せないし、その時の感覚で、普段の自分の日常会話を根拠に言うだけですから。
ネイティブはネイティブゆえに自分の言語を客観的に見れないことが少なくありません。われわれ日本人が日本語を客観的に見にくいのと同じです。
番組内で、Kアナウンサーが、もっと早く知っていればよかった。そうすれば外国人スターにインタビューしたときにMy name is…なんて言わなかったのに、このよに残念がられた場面がありました。
お気持ちはわかります。
しかし、ハリウッドスターなど、外国人にインタビューするときに
My name is…
は完璧に自然で、正しいです。
外国人に日本人の名前の響きは、ぱっと聞いてすぐに名前と判断できません。Toshi, とかJunとかならいざ知らず、ほとんどの名前は欧米人にはなじみがありません。
I am…と言ってももちろん問題ありませんが、
My name is…で始めた方が、聞く側の立場からすれば、
“Okay, your name is?”と名前を聞く体制になれるので、分かりやすく親切です。
以上くどくど、述べましたが、
日本の英語教育の問題は、文脈や状況を無視した画一的な教え方にあるはずです。
そこをまた無視して、単にI am の方が多いようだから、そちらだけで教える、その発想だと本当に日本の英語教育は進歩しません。
そしてさらに大きな問題は日本語訳です。
My name is ….は「拙者は・・・でござる」
What’s your name? は「あんた名前は?」
これは断じて違いますし、また、そのように日本語で理解してもらおうとする発想こそ‟古い!”そのことに気が付いてほしいものです。
look, watch, seeの違いが分かること。say, tell, talk, speak,の違いが分かること。
使えもしない難しい単語をたくさん暗記させるより、使いこなせる単語を使いこなせるように学ばせてあげる。
英文法も英文法のTestのためではなく、英語を使いこなす道具として教える。
コミュニケーションツールとして英語をとらえること。そういったことの方がはるかに大切だと私は思います。
2014年1月23日 14:36 - CATEGORY : blog
代名詞を使う意味を体験させる
代名詞にはそれを使う理由が二つあります。
一つには、同じ固有名詞を何度も言うのが面倒くさいから。
もう一つは、それで相手が分かるからです。
このことを体験させないで、いきなりhe だの、sheだの、they だの、itなど言わせようとする(書かせようとする)ので、生徒はなかなかこの代名詞を使いこなせません。この代名詞は何を指すか、そんな本来あまりにも簡単な問題に答えられなかったりするのです。
弊社学校の中学生コースの最初には次のようにしています。
しばらく(一か月から一か月半ほど)代名詞(Iとyouは例外)は使わないでレッスンを進めます。
例えば、
Instructor: Does your mother play any sports?
Student: Yes, my mother does.
I: Do you and your family live in Chiharadai?
S: No, my family and I don’t.
I: Are your hands clean?
S: Yes, my hands are.
I: Is your school big?
S: No, my school isn’t.
こういったyes-no questionsのやり取りなどをたくさんします。
そうすると、生徒はそういうものかと、指示通りにやりますが、主語をそのまんま繰り返さなければならない英語に、“面倒だ!”と感じてきます。
それでもしばらく続けて、タイミングを見計らってhe, she, we, they, it などを紹介します。
そして、同様のyes-no questionsに対して、今度は以下のように行います。
Instructor: Does your mother play any sports?
Student: Yes, she does.
I: Do you and your family live in Chiharadai?
S: No, we don’t.
I: Are your hands clean?
S: Yes, they are.
I: Is your school big?
S: No, it isn’t.
この様にして、生徒に代名詞を使うことの便利さを体感してもらいます。
このやり方には、他にも素晴らしい副産物的効果があります。
いきなり代名詞を使わせて教えると、英文の構造に目を向けません。
例えば、Yes, I do. が一つのまとまった、単なる肯定の答えのように錯覚したりするのです。
I: Does your school have a swimming pool?
S: Yes, I do.
I: Do your parents often go out together?
S: Yes, I do.
この様に会話にならなかったりします。このような返答を一般の方でも、初級レベルの方は、私の学校にいらして最初のうちは頻繁に言います。
ところが、代名詞を使わないでしばらく教えることによって、
Yes, NoのあとのSubjectをその都度、その都度様々な言葉で言うことを体験させられますから、知らず知らずのうちに意味のある、substitution practiceが出来てしまうので、英文構造自体に注意が行きます。初期の段階でのこの理解度の差は、あとで大きく響いてきます。
また、次のようなこともあります。
あなたの家族で母親だけが、ピアノを弾くとしましょう。
そしてある話の流れの中でこんな質問がなされたとしましょう。
Does anyone in your family play the piano?
この質問に
Yes, my mother does.
と答えられる人がなかなかいません。
Yesの後は代名詞でないとしっくりこないような教え方をされているからです。
まず、あえて代名詞を使うことをすこし延期して、代名詞を使うその意味を体感させる。
参考にしていただければ幸いです。
次回の投稿は、どのように代名詞を生徒に紹介するか。それについて少し触れたいと思います。
2014年1月22日 14:21 - CATEGORY : blog
he, she, などを彼、彼女と決して教えない
「マイヒー」これを私が生徒さんから聞いて目を白黒させたのは、もう何年も前の話です。その生徒さんは女子高校生で、彼女は自分の彼氏のことをそのまんま、”my he” と言ったのですね。これは極端な例だと思われますか。いいえ、別の例を出しましょう。私は今でこそ長年の経験と信念から小学生に英語を教えることをしていませんが、10数年前一時小学生も生徒さんとして受け入れていた時期がありました。その時のことです。
名前は伏せておきますが英語・英会話を教える圧倒的に有名な某英語・英会話教室に何年も通われた男の子が途中からクラスに参加しました。ある日のレッスンんでのことです。人の職業を聞くアクティビティをしていました。
What does your father do? と私が一人一人に聞いたと思います。
自分の父親の職業をよく知らない子も多いので、あらかじめ職業カードをわたして、そのカードが自分の父親の職業だということに設定していました。
それぞれ、He is a firefighter.
He is a carpenter.
He is a doctor.
などと答えて、その子の番になりました。彼はこう言いました。
My father is a police officer.
私は、Okay, he is a police officer.
my fatherと繰り返さずに、heと言う単語を使うように促しましたが、
かれはキョトンとした顔をして、かたくなに
My father is a police officerと言いつづけました。
そこで、
What does “he” mean in this case?
と彼に聞いてみました、私は、彼の答えに思わず心の中で‟あっ”と言いました。
なんでそんな分かり切ったこと聞くの?といった表情で、
「彼」
これが彼の答えです。
つまりこうです。父親のことを「彼」と言うことは彼にはあまりにも抵抗があって言えなかったのです。
その場で”he”とはどういう働きを持った単語なのか説明しました。彼は目をまるくしして、でも半分疑うような眼差しで私の話を聞いてくれました。
(ちなみにこのときの彼はその後高校卒業まで私の学校に通い、念願の医学部にも合格しました。)
theyにしても同様です。
theyを、彼ら、彼女ら、それら、などと教えてしまうと、本当にこの単語は使いこなせません。
学校の授業でも、theyを‟彼ら”と訳させる場面が非常に多いので、生徒たちの頭にはThey=彼ら と言う図式が出来上がってしまうのです。
話す英語を教える際に、このことは、基礎的な部分でも本当にインストラクターを悩ませます。
例えば、本当にものすごく簡単な問いに対しても、
A: Are your hands clean?
B: Yes, …..
Yes, they are. のtheyがなかなか出ません。
A: Do your eyes hurt?
B: No, ….
No, they don’t. このtheyがなかなか出ません。
複数でも、手や目をそれら、ましてや、彼ら、などと言うことは決してないからです。
ほんの少しの工夫で、これら代名詞は、日本語を介さずに、その働きを直接生徒の頭に入れるやり方が、いくらでもあると私は思います。
次回の投稿で一つ紹介しましょう。
2014年1月10日 16:12 - CATEGORY : blog
出来ることから始めましょう
さて、いよいよ具体的に行動に移すときです。文科省の英語を英語で教えるという方針は2020年から本格始動ですが、そこからいきなりヨーイドンで始めるには無理があるでしょう。その時点で生徒にはこう言わせたいものです。「なんだうちの英語の先生はそんなこともうとっくにやっているよ。」
そこをめざしてがんばりましょう。
では、これまでずっと日本語で英語を教えてきた教師がまず何から始めるべきか。
いきなり、‟よし、今日から全て英語で授業を進めます。」と生徒に言っても、それが本当に出来るでしょうか。
あなたが、もし「出来る」と言う自信があって、本当に実践できるのなら、それも一つの方法かもしれません。それが一番いいかもしれません。
ただ、多くの先生方にはやはり抵抗があるでしょうし、また、生徒も面食らうでしょう。
そこで、私からの提案です。
まず、新しく出る単語の意味の説明をするさい、これまでの日本語訳での説明をやめ、英語を使って説明することから始めたらどうでしょうか。
英単語を一つ一つを日本語訳ではなく、英語で理解する。
仮に生徒が頭の中で、日本語訳を探したとしても、それはそれで構いません。大切なのは生徒に与えるメッセージです。
英語は英語で理解するもの、この概念をしっかりと生徒の頭に落ち着かせるためには、まず英単語の意味を日本語訳に頼らない方法で理解する。
それが大切です。
そんなこと言われても、難しすぎる、と感じられる方もいらっしゃるでしょう。
あなた自身が辞書代わりになろうとすると難しいでしょう。英語で説明するというより、英語を使って説明すると申し上げました。
具体的に例を示したいと思います。
次回の投稿でいくつかお示ししましょう。
2014年1月4日 18:03 - CATEGORY : blog